医師数が十分でなければ、救急を止め、昼間の診療に特化せよ

                                   (実際の例)

・・・・救急外来で未収金が多いということは,救急外来を続けられないと言う大義名分にはなる

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 A企画というホームページを立ち上げ、いろいろなことを皆さんに提案してきたが、その代表的なもののひとつが、このタイトル「医師数が十分でなければ、救急を止め、昼間の診療に特化せよ」ということである。

 最近、このようなことを実践した公的病院があったのでそのことについて述べる。

 日本海側のある街の市立病院であるが、この病院が救急を止めた。体面を重んじるあまり、救急を止められない病院が多い中、この病院の行ったこと。時期にかなったすばらしいことだと思うが、そこに至る過程は,実際には決して平坦なものではなかった。

 一般にいやしくも公的病院であるから、止めるとすると、市議会の承認が必要だ。また、地元の医師会の意向もなかなか無視はできない。つまり、理想を言えば、みんな賛同されて救急を止めたいのであるが、なかなかそうは行かないのが現状だろう。どこにでも話の分からない人はいるものだ.

 ここの病院でも、医師不足から、24時間365日救急の維持にあたり、この病院に残留している医師の負担は度を超してひどくなってきた。やっぱり、市民には「(病院が閉じていて)何かあったらどうするんだ」という意見は根強いし、地元の医師会も「お前ら、もうちょっとがんばれ」という感じであったという。

 あまりに大変なので、地元の医師会員(地元の開業医)でローテーションを組んで、18時から22時までその市立病院の救急外来をすることになった。

 実際に救急外来をやってみて、地元の医師会にも、心底はっきりと分かったことがあったという。つまり、救急外来に来る患者のほとんどが救急の患者ではないということである。救急を担当した地元医師の中には「なんでこんなもんで,こんな時間に病院に来るんだ」と怒りだす医師もいた。また、救急に来る患者の中には診察代を払わない者も多い。

 このまま、救急外来を続けていては、救急外来どころか、よく巷であるように、医師が止めてしまい、昼間の診療もできなくなってしまう。

 逆に地元医師会が市に働きかけ、この市立病院の救急外来を止めさせたという。

 おかげで、病院の職場環境は各段に良くなり、私の友人も「もうしばらく居よう」という気になっているようだ。逆に,この病院もご多分に漏れずギリギリの人員でやっているので,もし彼に抜けられたら,多くの医師が次々に辞め解体していたことだろう.機動的に救急外来を辞めたおかげで,存続し得ている.

 一方で未だに24時間365日体制を続けている隣の街の市立病院は仕事が大変になったと言っている。

 救急外来を続けるも止めるもその市が決めること。そのことで、この市を責めるのは筋違いも甚だしい。

 残念ながら,今の医師不足は、厚生労働省がやらなくても良い研修医制度を平成16年に強行して始め、それによって引き起こされたもの。その責任を自治体が背負うこともあるまい。

 病院が崩壊すると、その市は病院を簡単に手放す訳にも行かず、毎年ふくれあがる多大な借金を背負うことになる。また、今後、この医師不足の状況が悪化することはあっても好転する見通しなど一つもない。

 自分の街の公的病院を維持しようと思ったら、速やかに救急外来を止めるのが、何よりも市民のためであろう。


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大きく変わった日本人(日本に居る人間)の気質

 人の迷惑を考え行動するのが、従来の日本人の行動様式であったが、病院に関しては違うようだ。

 「本当の救急のとき以外は夜、病院に行かないようにしよう」と声をかけているが、そんなことが、今の日本人(日本国にいる人)の耳にどこまで届くのだろうか。開いているから来るのである。昼間は仕事で来れないのである。開いているから夜来る。

 また、税金を払っているのだから、市立病院のお金はただ、と勝手に考え払わない不心得者も無視できないほどいる。私の個人的な意見を言わせて貰えば,救急外来で未収金が5%以上に達するのであれば,もはや,救急外来を続けられないと言う大義名分にはなるのではないか(5%が10%でも2%でも良い.それは自治体の考えること.ちなみに今や救急外来の未収率は10%に達し,経営を圧迫している)救急外来を辞めるに当たり,公的病院では,「大義名分」こそがもっとも大事であると考える.

 市民に何かがあったら困る、ということで、いつも市立病院を開けているのであるが、その善意につけこみ、不心得を働く。思うに,善意にこそつけ込みやすいのである。

 なんと言うか、24時間救急を維持するような精神風土は今の日本にはないのではなかろうか。とすれば、無理せずに、速やかに救急外来を止めることが万人のためであろう。

【参考記事】

都立ER3病院の未収金、20%は外国人   05年度

 東京都と独立行政法人国立病院機構は未収金の発生状況や原因をまとめ、5日の厚生労働省の「医療機関の未収金問題に関する検討会」で示した。ER(救命救急室)を抱える都立3病院で2005年度に発生した未収金は1億6000万円に達し、20%が外国人だった。国立病院機構でも救命救急センターでの未収金の発生が目立った。

 広尾、墨東、府中のERを持つ都立3病院での未収金は、05年度は1億6404万円だった。このうち、外国人の未収金は3279万円で、全体の約20%を占めている。

 その外国人のうち半数以上の57.1%が無保険者で、19.9%は保険証の確認ができなかった。

 入院で最も未収金が多かったのは救急部門の29.9%で、次いで内科の27.6%、産婦人科の12.4%などが続いた。外来でも救急部門が44.8%

【コメント】30%の未収金.こんなんじゃあ,東京都は救急を続けられません.外国人の未収金も目立つ.きちんとさせないと...税金で運用されているということを,石原さんも重く考えないと..


【コメント】医師の応召義務も努力目標であるが,重要なセーフティーネット.しかし,不心得者が出現すると,このようなものが機能しなくなる.

 こんな状況でなぜ赤字を出しながら救急をするのか,私は不思議でたまりません.自治体も国からの助成金が細る一方で大変なはずであるが... 未収金は後ほど,きっちりと増税という形で,浜松市民に実際に降りかかってくることになる.

<未収金>うわさ拡大し5770万円に 浜松の病院 10月11日

 浜松市中区の総合病院「県西部浜松医療センター」(脇慎治院長、606床)で06年度、患者からの未収金が5770万円に上り、同年度末の累積債権が9189万円にもなっている。市内では「公的な病院だから医療費を払わなくても受診できる」とのうわさが広まっており、それが一因という。市から運営を委託されている市医療公社は「一部の不払い者のせいで医療サービスに影響が出かねず、ゆゆしき事態だ。市の債権回収対策課と連携することも検討しており、悪質なケースには強い態度で臨む」としている。

 病院は市が設置しており、市健康医療部の担当者によると、数年前から「あの病院はお金を払わなくても平気」「昼より夜に行った方がいい」などといううわさが流れ始めた。特に06年から激しくなったといい、会計処理のできない夜間や救急での診療に対する支払いを督促しても「どうせ税金で何とかなるだろう」などと拒否され、中には出産で入院中にこっそり抜け出して行方不明になる人もいるという。

 未収金は、04年度3200万円、05年度3850万円と増え続け、06年度5770万円に。07年度も減る気配はないという。

 明らかになっている06年度の累計は、決算時点で時効になっていない04〜06年度分の患者593人分で、1人当たり約15万5000円。外国人とみられる患者も72人おり、医療費が高額になりやすい産婦人科の未収が目立つという。

 同病院の年間収入規模は06年度は124億円で、直ちに経営に支障が出るわけではないが、市医療公社は「このまま増えれば、必要な資材が買えないだけでなく、職員の給与にも響きかねない。回収も強化するが、受診者のモラルにも訴えたい」としている。医師法は、医師は訪れた患者の診察を原則断れないと定めており「持ち合わせがない」と言う患者がいた場合はクレジットカードがあるかを聞いてカード払いの導入も検討している。【竹地広憲】

 ▽厚生労働省「医療機関の未収金問題に関する検討会」委員、山崎学・日本精神科病院協会副会長の話 給食費や保育料と同様に、医療費も確信的に払わない人が多い。こうしたうわさはすぐに広まりやすいと思う。個々の病院だけでは解決しないので、金を払わない人にも診療する義務のある現在の制度を含め、法律などの見直しを国に訴えたい。

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