中核病院破綻の原因のひとつは,1年目,2年目の医師が「研修医」ということになり,当直をできなくなったことにある.

 

 今日は,地域の中核病院破綻の原因を考えていきます.

 私は破綻の大きな原因として,1, 2年目の医者が研修医制度のせいで「研修医」となり,当直ができなくなったことにあると思うのです.

 ここでは,1, 2年目が当直から抜けたことによる,数量的損失を見てみました.

 病院を維持するのに,「当直をどうするか」というのがすごく大きな問題になってくると思います.
 研修医制度のせいで,少なくとも1年目,2年目の人が当直しなくなった.その人数分,当直する医師は単純計算でも足りなくなっていると思います.
 この分をどのくらいと見積もればよいのか.

 以前,あれは私が医者になって2年目の時に函館の某中核病院に勤務していた頃,その病院では40歳を過ぎたら当直しなくても良い,と言う不文律がありました.40歳目前の上の先生が嬉しそうに,そしてさみしそうに,「オレも来年から当直しなくて良いんだ」と言っていました.
 
 ここでは,おおざっぱに,40歳から45歳あたりまでを当直の上限と一応しますと,研修医制度が始まり,1, 2年目の医師が当直ができなくなって,当直の人数は1 - 1.5割減ったという計算になりますね.また,実際1, 2年目は結構きびしい時に当直をやっている.すなわち,週末とか正月とかですね

 また,2次救急の病院でも1年目の医者を半年ほど鍛えて,当直に出していた.もちろんその際は上の先生のだれかがバックアップしていた.しかし,バックアップと自ら当直するのとは負担が全然ちがいます.もちろんバックアップの方が格段に楽である.

 と考えると,1-2年目の病院当直の貢献度は,人数的には1-1.5割であるが,おそらく当直日数は上の先生より多いだろうし,しかも,週末,正月,2次救急の時にやっていると考えると,当直に関しては3-4割,あるいは5割位の貢献度があったと思われるのですがいかがでしょうか.

【上表:1-2年目の医師の当直業務の貢献度】

 研修医制度が平成16年に始まって,それが急になくなってしまった.

 そうなると,その負担は上の医師に降りかかることになる.40歳以上は当直しなくてもよい,という様な不文律はなくなります.実際に,そのくらいの医師も当直に駆り出されているのが現状で,この状況は,きっと来年にはもっと拡大します.

 病院は,この状況を放置してはなりません.特に,このホームページで何度も取り上げているように,35歳を過ぎた医師に,5回以上の当直(寝当直)を間違ってもさせてはいけません.そうなった時,その医師は「もうこの病院にいても将来はない」と,はっきりと思います.そして,勤務替えや開業を考え,速やかに実行するものです.

 研修医制度開始,そしてそれに伴う医局の崩壊,その結果として生じた地域の中核病院の医師不足の流れは加速することはあっても止まることはありません.この流れの中で,地域の中核病院は今後どんどん容赦なく淘汰されていきます.

 自分のところは絶対に淘汰されたくない,と思ったら,救急外来のあり方を思い切って考え直し,また,医師の当直体制には最大限の注意を払わなくてはいけません.

 

 まあ,この問題を解決するには,臨床研修医制度の即時停止がもっとも効果があるのですが,そんなことを言ったって,この制度はずっと続くように思います.また,停止するにしても,数年後です.

 病院淘汰の流れは凄まじく,数年経ったら,大方勝負はついていると思います.このホームページをもう一度熟読し,間違いのない対策を立てることが必要です.


研修医制度の問題点について,近畿医大 浜西教授が語っています クリック

目次  設立の目的  最近の医療情勢に対する解析  会社紹介  A企画へのアクセス  掲示板

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

2

3

4

5

6

7

8

9

0

1

inserted by FC2 system