総論 医師待遇 問診票 の意義
 まず,医師待遇 問診票を埋めてみましょう.きちんと貴院では埋められるでしょうか.

【今までの医師との雇用関係】
 今,医師不足に泣いている病院というのは,すなわち,今まで大学の医局から医師が順繰りに派遣して貰っていた病院が多いようです.
 このような病院は契約が曖昧(あいまい)でした.雇用契約自体がない病院もかなり多かったのです.実は今までは曖昧でも良かったのです.

 なぜなら,派遣されてくる医師は,同じ医局の先輩や仲間から,その病院がどんな病院であるか,どのような勤務状態かあらかじめ聞いてきていたのです.つまり,病院との契約がなくても医師はすでに情報を手に入れ,医局から命令されて来るわけですが,その時点であるところで納得してその病院に働きに来ていたのです.その情報とは,例えば,「すっごく忙しいけど,症例を積めて勉強になるぞ」とか「ヒマだけど,まあいいか.やり残した実験でもやるさ」などなど色々あります.

 医局の関連病院の中には,医局員に人気のある病院もあれば,評判の悪い病院もありました.評判の善し悪しは,給料の多寡よりも,むしろ,良い指導者がいて勉強になるかそうでないか,あと,その病院のロケーション,そのような要素で決まってきていたように思います.医局員と言うものは,大方10年目以下の若い医師で構成されています.
 このような若い医者は,多少の給料のことより,症例を積み,早く一人前になることを切望している場合がほとんどです.医局とはそのような医師の集まる集団でした.

 人気のある病院に1年出張してきたら,次の一年は,ある意味で人気のないところに行きそこで頑張ったり,留学する人なんかは,これから金が要るので,田舎の方にあるが故に人気はないが,給料をはずんでくれる病院に行ってみたりして,医局内でバランスを取っていました.

 したがって,医局から医師を派遣して貰っている関連病院は,医師との雇用契約が曖昧でも良かったのです.

【今後の展開は】
 しかし,医局の医師派遣能力は今後年々低下してゆくことは間違いありません.となると,病院側は,ジャミックジャーナルや医事新報などに求人広告を出して医師を求めて行かなくてはならないことになります.
 そのためには,医師の待遇というものを明らかにしなくてはなりません.今までのように曖昧にしていては,医師は来てくれません,というか,行きようがない,というのが現実です.

 また,病院に勤務する医師の数はどんどん減っていますから,以前と同じような勤務をいつまでも要求していると,医師はかなりの過重勤務になり,ある時,突然,多数の医師が一斉に辞めたり,次から次へと医師の辞職が相次いだりすることになります.

 今,その様な雪雪崩式の瓦解を防ぎ,かつ,新規の医師の募集を成功させるためには,まず,医師の待遇を明らかにしなくてはなりません.つまり,待遇を明らかにするとは,「医師待遇 問診票」を埋めると言うことです.

 これを埋めると今まで病院側で,医師の待遇面で不明瞭だったところが分かってきて,スッキリしてくると思います.これが第一歩です.
 そうすると,医師に対して譲歩できる点,譲歩は出来ない点もどんどん明らかになってくると思います.

 そうして,なるべく詳しい求人広告を作る.そうすれば,職を求めている医師とも話をしやすくなります.


 看護婦などの医師以外の医療資格を有する人や,事務職員は,労働基準法や,有給休暇の考え方などについて実によく知っています.これはアルバイト情報誌などの後ろにも書いてありますし,自分のことなので実によく勉強しておられるようです.それに対して,医師はこのようなことをまったく知りません.

 それを知って知らずか,病院管理者側は医師にかなり無理なことを言ってしまっているようです.
 例えば,尾鷲市立病院が年収5000万円という破格の給料で産婦人科医を雇ったのですが,1年ほどでこの産婦人科医は辞めてしまいました.この産婦人科医の勤務状態は極めて厳しく,半年に取れた休日は1日だけだったと言います.毎日,分娩室の隣の部屋に泊まり込み,そこで仮眠をとっていたと言います.
 また,札幌近郊の江別市立病院で7人の内科医が一斉に辞表を出したニュースがありましたが,ここでも,48時間の連続勤務が珍しくなかったと言います.

 この二つのケースに関して,別に詳しく分析をしますが,医師に過重勤務を要求し,医師もなるべくそれに応えようとしたが,ある時限界を感じ,辞表を提出してしまうというパターンだと思います.救急医療などはチーム医療の代表であり,個人では何ともできません.だから,限界を感じるときには,医師全体が限界を感じることになります.だから,もうだめだ,となると,全員が一斉に辞めてしまうことも珍しくないのです.

 なぜ,辞める前に相談してくれないんだ,そんな一斉に辞めたり,短期間に雪なだれ式に次から次へと辞められたら困るんだ,と言う病院関係者は多いと思います.

 しかし,そうはなりません.なぜか.実は,医師というのは,ちょっとおめでたい人が多いようで,労働基準法,時間外労働,有給休暇について余りよく知っていません.これについて知識があれば,その様な法律をテコにして病院とも話し合えるのですが,そのようなことを知らない.私も,とある病院で,救急外来への対応が忙しく,時間外労働がかなり多くなり,時間外手当のことを病院に相談したことがありました. 

 すると,事務のえらい人が「先生は部長ですから,時間外労働というものは本当は病院は払わなくても良いのです.しかし,我々は5万円つけているでしょ」と言うのです.「5万円まるめ」という考え方です.そう言われると私は何も言えなくなった.だけど同時に,このきつい環境から逃れるためには,辞職するしかないんだな,と考えるわけです.すると,あとは退職まで一望千里です.実は,新しい職場はすぐに見つかります.

 だから,逆に,労働基準法に基づく時間外労働や休暇のことを,明瞭にしてあげると,現職の医師も話し合う論点が見えてきて安心すると思うのです.また,新規に職を求める医師もその辺の所(休暇は? 時間外労働は? 拘束時間は?)を詳しく聞きたいと思っているようです.

 したがって,特筆大書するところは・・・

 拘束時間 時間外労働 当直 休暇 のことを明らかにすることです.


 医師の世界というものはひどく狭いし,職を求めるにも,休暇,時間外労働,拘束時間,について明示された情報がありません.したがって,「おまえの病院どうだ?」とか「あそこの病院,当直ばかりで大変だ」などの風評やうわさ,あるいは知人や先輩,仲間に影響されて動いているのが現実です.

 だからこのポイントを明らかにして,フェアーに公明に医師に接していけば,必ず,貴院のために報いてくれる良い医師が多く集まるようになると私は思います.


目次  設立の目的  最近の医療情勢に対する解析  会社紹介  A企画へのアクセス 

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

2

3

4

5

6

7

8

9

0

1

inserted by FC2 system