救急外来の縮小 袋井市民病院の新しい試み

【新聞から】

救急外来受け入れ停止@静岡県袋井市
 救急外来受け入れ停止 10月から 袋井市民病院


袋井市民病院(静岡県)
袋井市の位置

 袋井市民病院(袋井市久能)は10月1日から、平日午後5時から午後10時までの救急外来を重症患者などを除き、原則受け入れないことを決めた。医師不足を背景に過重労働に悩む勤務医の負担を減らすのが狙い。同時間帯は、市内の約四十の開業医が当番制で救急患者を受け付ける。

 同病院では平日夜間、内科、外科医の2人体制で当直体制をとっている。全国的に問題になっている医師不足は同病院でも例外ではなく、最大で60人近くいた医師は現在40人(非常勤を除く)。1人の医師が1カ月に3、4回の当直をこなし、当直の翌日に平常業務につくなどの状態が続き、医師の負担軽減が課題になっていた。

 夜間の救急外来の8割が午後5時から午後10時に集中していることから、市内の開業医が同時間帯をカバーし、残りの時間を市民病院が受け持つことになった。これまで開業医がカバーしていた平日午後10時から翌午前6時までの救急当番医制度は廃止する。

 管理者の原田英之市長は「医師の負担軽減のため、市民にもぜひ協力してもらいたい」と話した。同市では救急医療ガイドを今月中に全戸配布し、周知を図る。県内の公立病院では、掛川市立病院も10月から、平日夜間の一部時間帯で一次救急の受け入れを停止する方針を固めている。

●解析●

 今や,どこの中核病院でもそうであるが,ここ静岡県の袋井市民病院でも同じような状況なのだな,と思った.

 60人いた医師が40人となり,救急の負担が一気に増えてきた(参考グラフ)

 私の基準によると,ひとりの医師ができる夜間当直は,月に4日まで.ただし,この当直は寝当直である.新聞によると袋井市民病院では,救急外来の当直が3 - 4日であるようなので,すでに限界は超えていると言える.

 何かをしないと,このままでは,袋井市民病院でも大量辞職が起こる可能性は十分にある.臨界点は近い.

 ここでは,市内の開業の医師と連携をとり,10時までは救急患者を取らない事にしたようだ.前向きな姿勢は評価できる.

 しかし,私に言わせれば手ぬるい.来年はまた,医師が減るだろう.派遣元の医局はどんどん医師派遣能力は落ちてくるからだ.なぜなら,医局に新人医師が入らないからである.

 具体的な対策・・・どうするか.3つある.

【1】袋井市民病院は毎日救急外来をやっているのだろうか.やっているとしたら,これは大変なことだ!! 
 
 まず,近隣の市町村と話し合い,救急外来を持ち回りにする必要がある.近隣の3つか4つの病院がつるめば,救急外来の負担はかなり減る.

 このようなことを言うと,袋井市民の中には「無責任なこと言うなよ.我々の救急医療はどうなるんだ!」と怒る人がいるかも知れない.しかし,もうそんなことを言ってはいられない状況なのである.2, 3日に一回,地元で救急外来が起動しているだけでも良しとすべきである.全部失うよりマシであろう

【2】また,常勤医師の数の減少と,ひとりあたりの当直日数を注意深くモニターすべきだ.今でも当直日数はオーバーしている.これ以上,増えると辞める医師がポロポロと出てきそうだ.まず2 - 3人出る.そうすると,残った医師の当直が辛くなる.今,月の当直日数が3-4日と言うが,これが5-6日になる.そうなるともうダメだ.沈没船から逃げ出すネズミのように医師は雪崩が起こったかのように辞めてしまうだろう.

 もしここまで言っても救急を毎日続けたいならば,今から,不退転の決意で,月に5日目以降の当直の翌日は,半日くらいフリーにしなくてはダメだ.こんなことは外来のコマ数を削れば すぐに出来ることだ.どんどん先手を打って策を講じていかなければならない.

【3】医師の時間外手当をキチンと見ているか.キチンと見た上で救急外来は採算が取れているのか.これをもう一度,医師の時間外労働も考慮した上で算定すべきであろう.

 「救急を辞めるな」という市民の声は根強い.しかし,採算の取れないものをズルズルとやるわけにはいかない.そのような反論を押さえるためにもキチンとした数字を出さなくてはならないのだ.

目次  設立の目的  最近の医療情勢に対する解析(記事一覧)  会社紹介  A企画へのアクセス 

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

2

3

4

5

6

7

8

9

0

1

inserted by FC2 system