●解析●
今や,どこの中核病院でもそうであるが,ここ静岡県の袋井市民病院でも同じような状況なのだな,と思った.
60人いた医師が40人となり,救急の負担が一気に増えてきた(参考グラフ).
私の基準によると,ひとりの医師ができる夜間当直は,月に4日まで.ただし,この当直は寝当直である.新聞によると袋井市民病院では,救急外来の当直が3 - 4日であるようなので,すでに限界は超えていると言える.
何かをしないと,このままでは,袋井市民病院でも大量辞職が起こる可能性は十分にある.臨界点は近い.
ここでは,市内の開業の医師と連携をとり,10時までは救急患者を取らない事にしたようだ.前向きな姿勢は評価できる.
しかし,私に言わせれば手ぬるい.来年はまた,医師が減るだろう.派遣元の医局はどんどん医師派遣能力は落ちてくるからだ.なぜなら,医局に新人医師が入らないからである.
具体的な対策・・・どうするか.3つある.
【1】袋井市民病院は毎日救急外来をやっているのだろうか.やっているとしたら,これは大変なことだ!!
まず,近隣の市町村と話し合い,救急外来を持ち回りにする必要がある.近隣の3つか4つの病院がつるめば,救急外来の負担はかなり減る.
このようなことを言うと,袋井市民の中には「無責任なこと言うなよ.我々の救急医療はどうなるんだ!」と怒る人がいるかも知れない.しかし,もうそんなことを言ってはいられない状況なのである.2, 3日に一回,地元で救急外来が起動しているだけでも良しとすべきである.全部失うよりマシであろう.
【2】また,常勤医師の数の減少と,ひとりあたりの当直日数を注意深くモニターすべきだ.今でも当直日数はオーバーしている.これ以上,増えると辞める医師がポロポロと出てきそうだ.まず2 - 3人出る.そうすると,残った医師の当直が辛くなる.今,月の当直日数が3-4日と言うが,これが5-6日になる.そうなるともうダメだ.沈没船から逃げ出すネズミのように医師は雪崩が起こったかのように辞めてしまうだろう.
もしここまで言っても救急を毎日続けたいならば,今から,不退転の決意で,月に5日目以降の当直の翌日は,半日くらいフリーにしなくてはダメだ.こんなことは外来のコマ数を削れば すぐに出来ることだ.どんどん先手を打って策を講じていかなければならない.
【3】医師の時間外手当をキチンと見ているか.キチンと見た上で救急外来は採算が取れているのか.これをもう一度,医師の時間外労働も考慮した上で算定すべきであろう.
「救急を辞めるな」という市民の声は根強い.しかし,採算の取れないものをズルズルとやるわけにはいかない.そのような反論を押さえるためにもキチンとした数字を出さなくてはならないのだ.