零戦のパイロットと中核基幹病院の勤務医の類似点

勝敗を分けた日米パイロットの生活環境

 日本軍の場合,部隊が戦い続ける限りパイロットはいつまでも戦地に留まって出撃を続けることになる.もちろん,何日かに一度は休養日があり,基地から離れて骨休みをするし,ときには遠くの温泉地まで出かけて戦塵を洗い流すことも珍しくない.けれども,それはあくまでも状況の判断から与えられるものであって,上層部の好意に頼っていた.

 したがって,ノモハン戦線の陸軍戦闘機隊やソロモン戦線の海軍戦闘機隊のパイロット達は,ほとんど休み無しに戦うことを余儀なくされていた.

 ところが,同じソロモンにいたアメリカ人操縦者は,次のような勤務態勢であった.

 まず,前線勤務(戦闘)を6週間続けると,1週間の休暇が与えられる.この時は輸送機でオーストラリアに送られ完全にリフレッシュし,休暇明けに2週間の慣熱訓練を受け,前線に戻り再び6週間戦う.これを原則として3回(前線に延べ18週)繰り返せば,帰国の権利が与えられる.

koこの体制ならば,ゆっくりとパイロットを休ませることができ,また,戦場へ送り込む前の慣熱訓練では,新しい戦術や新しい機器の使い方を教えることも出来た.

 死ぬまで交代無しで戦う日本人操縦者と,6週間ごとにリフレッシュできるアメリカ人パイロットでは,空中戦の際にどちらが有利かはここに記すまでもない.

(いま「ゼロ戦」の読み方 より 日下公人 三野正洋 ワック出版社 1998年)

 前文の日本軍パイロットを中核病院勤務医と読み替えてみると・・・

「地域の中核病院の勤務医の場合,病院に勤務し続ける限り,入院患者,あるいは,救急の患者に24時間待機して備えなければならない.もちろん,何日かに一度は休養日があり,病院から離れて骨休みをするし,ときには旅行などしてリフレッシュすることも珍しくない.けれども,それはあくまでも状況の判断から与えられるものであって,病院側の好意に頼っていた.

 したがって,院内に救急室を設け,救急患者が夜中にひっきりなしにやってきている病院に勤務する勤務医は,ほとんど休み無しに勤務することを余儀なくされていた」

 戦争中の零戦パイロットの扱いと,今の病院勤務医の扱いがあまりに似ていることにお気づきだろう.

 何故我が国は,いざとなると人を大事にしないのであろう.前の大戦,パイロットの育成には莫大な手間とお金がかかるのであるが,パイロットにろくに休暇を与えずに死ぬまで働かせた.疲労のあまり集中力が途切れて,散っていったパイロットも沢山いただろう.

 今の勤務医も同じ.一人の医師の育成には莫大な手間とカネがかかっている.本人の努力もすごい.特に,新生児のICUをやるといったら技術的な難易度は医療技術の中でもトップクラスである.しかし,どうして,我が国は,勤務医をこう何というか苛斂誅求にこき使ってしまうのだろう.なぜきちんと休憩,休暇,そして,時間外に働いたら決められた時間外手当を払えないのであろう.

 そうして,ちょっとでもミスしたら,裁判,あげくのはてに,警察の捜査まで入る.警察の捜査は本来,殺意があってやった場合にのみ問われるものではなかろうか.警察の捜査がすぐ入ることには,さすがの訴訟大国のアメリカ人すらも驚いている.

 先日の,奈良県の大淀町立病院で妊婦が死亡した事件でも,すでに警察が入っている.また,転院を断った病院に対してもその理由を調べられているようだ.救急を断るのは,その病院の医師に全権があり,その医師の体調が悪ければ,あるいは気分がすぐれなければ,断っても良いのである.いちいち他人にあれこれと言われる筋合いのことではない.

 しかし,どうして我が国はその様な細かいことまであれこれと言ってしまうのだろう.このようなことでは,緊急の妊産婦や,新生児の救急などに対する,高度な熟練した技術を持った医師がその様な設備のある病院から,一目散に逃散してしまうだろう.また,その様な技術を身につけようとする医師がいなくなってしまう.現にその様な方向でどんどん進んでいる.

 奈良県立病院の5人の産科医が,時間外手当の支給を求めている.奈良県の方はそのことは承知しているようだが,財政難だから払えないと言う.こうもふざけた理由を私は今まで聞いたことがない.なぜ,我が国はこのような仕事に対して,きちんと評価し対価を払おうとしないのであろうか.

 また,彼らは新生児のICUを担当していて,例によって疲労困憊している.かつての零戦のパイロットのように.どうして彼らに十分な休息を取らせるような環境を整備できないのか.今更ながら,県立病院側は一人増員すると言っているが,この状態では5人全員,あるいは,そのうち何人かが辞めて,県立病院の新生児ICUと産婦人科が崩壊する可能性の方が,今や,1000倍くらい高い.ラバウル航空隊全滅と言ったところであろうか.

 それを回避するには,思い切った方策が必要である.A企画としては,まず,ここの県立病院の新生児ICUは新規患者の受け入れを月・水・金 に限るべきであると提案する.そして,担当医に休息を与える.時間外手当を支給することは言うまでもない.そんなことは,担当医に言われる前に払うものである.まったく,管理者として失格である.十分な休息を与え,時間外手当をきちんと支給し職場環境を整えれば,新規の医師も見つけやすくなるというものである.

 「月・水・金」しか受付をしなかったら他の日の患者はどうなるのだ,という話が出る.それは,今の現状では仕方がないとしか言いようがない.他の病院に行ってもらうしかない.

 もはや,「月・水・金」はおろか,この奈良県立病院では新生児ICUと産科の廃止の可能性の方が大きくなっているのである.「月・水・金」だけでもあることを良しとしなければならないだろう.

 また,全国に奈良県立病院のような状態に陥っているところはたくさんある.今こそ,救急への対応を狭め,医師の勤務状態を改善することが,むしろ,新規の医師を病院に呼び込め,病院の医療レベルを充実できると,私は考えている.それが,当A企画の主張である.


 さてさて・・・ちなみに,これだけの救急体勢をとっている国は他にはない.日本の馬鹿な官僚共が崇拝してやまない高福祉国家スウェーデンの産科医療の実態を下に紹介しよう.

スウェーデンの医療がどういうものか、ちょっと下を参考にしてみたら・・・

スウェーデン人と結婚して、「高福祉国家(と言われている)」スウェーデンで暮らしている日本人の手記です。ブログにあったものです。参考までに下のURLです。

    http://reekan-j.hp.infoseek.co.jp/ima.html

 高福祉国家と言われるスウェーデンで主人公やその友人のお産の記録ですが、日本では考えられないくらい、低医療でこんな事が実際に起こっているのか、冗談に思う方もいると思いますが、本当の話です。

 スウェーデンなど北欧諸国は高負担高福祉国家と言われています。なにしろ、給料の70%が税金で持って行かれてしまう。その代わり、福祉は手厚い。
 日本は、この前誰か政府のえらいさんが、日本は「低負担中福祉国家」と言っていたが、下を読んでどう思われますか?
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ほげ子33歳、スウェ一デン人仮名(本名だったらコワいが)の場合

 全妊娠期間を快調に過ごしたほげ子は 「このまま出産も快調にいくわね。」っとタカをくくっていた。 この先、地獄の分娩が待っているなどとは夢にも思わなかった。

 さて、陣痛が始まり U市A病院 (ほとんど意味のない伏せ字だな、ははは)
の分娩待機室でモニタ一をつけられ、 これから始まる出産ドラマにやや緊張するほげ子は准看が言う 「今日は人手不足で医者がみんな出払っているんだけど、 1時間おきにはチェックに来れると思う。 ちゃんとした呼吸法でしのいでね。」という言葉の意味もよく理解できないでいた。 だいたい「ちゃんとした呼吸法」というのも初耳だった。とにかく腹式呼吸をやっていれば間違いないや、と フ一ヒ一フ一ヒ一呼吸を始めた。

 だんだん陣痛が強くなり、呼吸が困難になる。 でも誰も見回りに来ない。 気が狂いそうな程痛い、3時間たっても誰も現れない。多分子宮口全開したみたい、何度も気を失いかけ、 夫ほげ男に励まされ正気にかえる。 4時間ちかくたち、やっと准看(助産婦ではないことに注意)が現れる。 「あら、そんな呼吸じゃだめよ、赤ちゃんが苦しむじゃない。」
 それなら初めから言えよおお、ばかやろおお!! と思ったのはずっと後のことで、 そのときは、もう、どうにでもしてくれええ!と思ったそうだ。
ほげ子、遂に力尽き失神してしまう。

 気が動転するほげ男、「このままじゃ、親子共々死んじゃう!」と 廊下を駆け出し医者を捜しに行く、 しかしホントに医者らしい人物は見当たらない!
「神様、どうか助けて!」 すると、廊下のつきあたりに白衣の青年を発見!!
うおおお!妻を助けて!! 「ごめんね、ぼく、医者じゃなく研修にきた大学院生なの」 んなあこたぁ、どうでもええわ! とにかく妻を助けて!と研修生を無理矢理分娩室に引っ張っていく。

 ほげ男もパニック状態だったが、もっと可哀相なのが医大生! まだ免許もないのにいきなり分娩室で失神している妊婦を助ける羽目になってし まったのだから。ハサミのような器具で胎児をとりあげようとするが、産道に器 具を挿入した時、勢い余って肛門奥深くまで切りさいてしまった!
 ぎゃあああ〜!!! ほげ子 はその後数ケ月間、ウンチを自分でコントロ一ルできずに紙おむつを使用。 あの悪夢から1年半近くたった今でもオナラを我慢する事が出来ない、、、って、 笑い話じゃないんだからね!
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ぞぞ子29歳、外国人仮名の場合16/feb

 妊娠8カ月目のある日、ぞぞ子はいつもとは違う鋭い痛みを感じ 直ぐに助産婦に電話を入れた。スウェ inserted by FC2 system