インストール・フィーとは,以下の様に新任医師が赴任する際に,その病院のある当地で必要とされるものにかかる費用のことである.
1)引っ越し代
2)医師住宅
3)家具
4)バンス(前金)
今まで,当直,時間外,休暇の扱いなどについて述べてきたが,それに比べるとこのインストール・フィーは単純な問題である.
問題は,病院の求人担当者というものは,このインストール・フィーことしか分からないせいか,やたらとこの部分のみ力を入れて,求人の売り物にしようとしているケースがある.
しかし,これは無駄である.無駄であるというのは,職を求める医師の関心事は,ちゃんと休暇を取れるか,とか,やたらに多い,そして,忙しい当直は困る,とか,時間外手当をどのような基準でどう払われるか,等につきる.それなのに,「50インチの大画面液晶テレビを買ってあげる」などと言って,釣ろうとするのは,愚の骨頂としか私には思えない.
さて,前置きはこの位にして説明に入る.
1)引っ越し代
転入の歳には,どこの病院でもこのお金は持っているようである.必要であれば指定業者を決めておくのも良い.
2)医師住宅
医師住宅は「配慮」こそが必要である.特に築15年以上の医師住宅は,設備が古くなっているので,いろいろと配慮する必要がある.
たとえば,この現代に,典型的なくみ取り便所では困るのである.実際にこのような病院もあった.
また,トイレも,ウォッシュレットなどをつけてやると,ずいぶん雰囲気が変わるものである.ウォッシュレットなども付けるのに5万円とかからないが,入居する医師にとっては,自分のポケットマネーで病院の設備を良くしてあげるのも,理屈が通らず釈然としないところである.
ある道内の中核都市の個人病院であるが,その街の基幹病院に勤務していた友人の談である.
病院にウォッシュレットの設備をお願いしたという.すると,すぐに了承はされたのであるが,実際に装着されたのは1年後であった.この時,この友人は開業の準備を進めていたが,ウォッシュレットが付くのと,その友人の新しい医院が建つのとはほぼ同時であったという.
これはいかに病院が医師住宅に配慮していなかったかの例である.このようなことでは,医師を積極的に病院単騎で求めて行かなくてはならないこれからの新しい時代には困るのである.
あと,何も張り切って医師住宅を建てる必要はないと思う.その場その場に応じて,臨機応変に,貸し家,や,賃貸マンションを当たればよいと思う.
3)4)家具,あるいはバンス(前金)
先の,50インチの液晶大画面テレビのような家具を入れるから来てくれ,とか,バンスをいくらか渡してでも来てもらおう,とする病院は多い.医師の欲しているところを理解していないからである.
そのような病院のために何らかのアドバイスをするのがこのホームページの狙いであり,このA企画立ち上げの私の動機である.
13インチのブラウン管テレビより,50インチのフラットテレビがあった方がそれは良いに決まっている.しかし,それは医師個人が何とかする問題だ.13インチのブラウン管テレビなど今や病院の倉庫に1個か2個転がっているものである.これを貸してあげるとよい.しかし,あえて,50インチの液晶テレビに新任の医師がこだわるのであれば,バンス(前金)を考えた方がよい.
バンスをいくら渡せばよいのかは,私自身もらったことがないので,私には確たるアイデアはない.純然たる病院の最良次第である.20万でも50万でも100万でも良い.
しかし,このようなカネを渡すのであれば,注意点が二つある.
○実際に医師が病院のある当地に来て,勤務が始まってから渡すこと.
当座のお金がないから早めバンスを渡して欲しいという医師も中にはいるかもしれない.しかし,医師でありながら当座のカネすらもないと言うのは,ちょっとおかしい.バンスねらいの詐欺師かも知れないし,本当に当座のカネすらないとしたら,人間的に大いに問題があると思わなくてはならない.その様な,医師にはあまり関わらない方が賢明である.
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○1年勤務したら,バンスの返還は求めないが,半年で辞めたら,バンス全額返還,また,半年から1年の間に辞めたら,バンスを半額返還を求めるなど,条件を付けて渡すべきだろう(辞めるときに給料から天引きするとよい). |
バンスだけ取られて,医師は来なかったという話も最近多い.ブローカーまがいの医師や,それを飯のネタにしているブローカーも世の中にはいるのである.
まじめな医師なら,バンスに関して上記のバンスの条件はもっともだ,と受け入れられるはずである.逆に,詐欺師まがいの医師やそのような仲介業者はバンスこそ飯の種,ねらい目なのである.
くり返し,特筆大書するが,大方のまじめな医師が新しい病院に勤めるに当たり大きな関心事は,バンスなどより,月の当直回数,救急当番に係る自分の役割と,休暇をきちんと取ることのできる可能性.学会参加に対する病院の考え方.有給休暇,時間外労働に対する手当の仕方である.