医師蔑視政策のなれの果ての医療崩壊(第一弾)

介護保険は医師抜きで・・・医師や病院に仕事を回さない,仕事を奪う政策の果てに

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 このホームページを立ち上げ,現在の日本の医療崩壊の原因についていろいろ考えてきたが,その原因には詰まるところ,政府,厚生労働省,そして,国民の医師蔑視が強いからではないか,と思い当たり,ひとつ記事をしたためた.

 その始まりは,2000年の介護保険開始.介護が医療か医療でないのか,その様な議論は別として,この手のものは,それまでは医師が仕切ってやっていた.しかし,このときには,その様な医師が取り仕切る,というのは,「過去の利権にしがみつく守旧派」のように言われ,医師ではなくてだれでもこのビジネスに参画できることが,「経済構造改革」だ,と言う論理がまかり通り,現在のような形になった.

 この流れはどんどん加速していき,結局は「老人の入院」を意味する,「療養病床」の廃止という所に行きついた.これは厚生省が急に打ち出したので,病院は,ある日急に老人医療という収入源を絶たれたどころか,つい2-3年前に作った施設がダメになったのである.

 病院というのは,ご承知の様に様々な科からなっている.科によっては,宿命的に赤字に成りやすい科がある.私の極論もある,ということをあらかじめお断りし,そのような赤字体質の科を挙げ,解説してみよう.

○心臓外科・・・慢性的な赤字部門.やればやるほど,赤字になる.設備投資も莫大だし,多くの人がいる.また,カテーテルなどの医療材料費も莫大にかかるためである.

○脳外科・・・・脳外科を新設するのに莫大な設備投資がいる.そのあと,脳外科の医師が常勤し,患者が順調に来てくれて,設備投資を回収するのに5年はかかる.

○小児科・・・・子供とはコミュニケーションが取りづらいし,また,親を納得させなければならない.大人の3倍の手間と時間がかかる.どこの病院でも小児科単体では赤字である.

○産婦人科・・・もともと,黒字体質の科であるが,今日のように,訴訟と賠償金がきついと,黒字体質とは言えない.働いて稼いでも,ある時,訴訟が起きて全部持って行かれてしまう.ただ,今や日本国で産科のある病院,NICUのある病院は,天然記念物を保護するように,保護していかなければ,容易に絶滅してしまうだろう.それほど希少価値が出てきている科でもある.

 まあ,以上のような科が赤字体質の科であるが,人間の命を救うという点で重要な科がならび,しかも今,崩壊が噂される科が並んでいることにお気づきだろう.

 実際に,病院には色々な科,部門があり,その様な赤字を補いつつ何とかやっているというのが現状である.

 さて,その中で,療養病床などの老人医療は,大きく黒字となる分野ではないが,地道に安定した収益の得られる部門であった.しかし,それが,2000年の介護保険導入以来,やせ細り,ついには,療養病床廃止が壊滅することがすでに決まっている.

 つまり,病院にとってみれば,上記の科の赤字を埋める重要な部門が無くなったに等しい.上記の科は見ると分かるように,人の生命維持に極めて重要な部門である.だから,病院から老人医療を無くするということは,上記の科を細らせることになるのである.

 厚生労働省が力を入れて,老人の面倒を診る療養病床を壊滅させ,浮いた医療費が3000億円という.実は,このうち,国が税金から出しているのはわずかにその1/4か1/3しかない.つまり,800億か1000億である.

 国はその分,介護保険を充実させたと胸を張る.しかし,今や,介護保険には6兆円の金がかかっている.

 それならば・・・・それだけの金をかけながら・・・である.3000億円が惜しんで老人を病院から叩き出し,6兆円をかけて介護保険をやっている.病院の収入源を減らし,介護業者にそれ以上の金を渡したという形か.

 このことも,現在,救急や産科,小児科が衰退してしまった原因の一つとなっている.

 

 また,よく出てくるのが,勤務医があまりの激務に嫌気がさし,開業してしまうケースが多いのだが,それに対して,「開業するのはけしからん」という論法だ.厚生省内部にもこのような議論があり,それに沿って政策を立案する動きがある.

 しかし,だまされるな! と言いたい.

 そもそも,現在において,開業するとは,具体的には無床診療所を開設することであり,厚生省は,「病院から医師がいなくなりけしからん」と言っているわけだが,本当におかしい論理である.

 医師が開業するとは,小さな無床診療所ではなく,病院を開業したって良いのである.現に個人病院で大きな病院はたくさんあるだろう.今はベッド規制で,新たに病院を作る事は出来なくなっているが,その様なベッド規制がなくたって病院など誰も作らないだろう.なぜなら,そんなもの作ってもすぐに破産するからである.

 政府は病院を締め付けるだけ締め付け,老人医療も病院から奪い,また,施設基準,看護基準もどんどん厳しくしたのでとてもじゃないが,黒字をだせるはずもなく民間や個人で出来る代物ではなくなった.

 大々的に救急をやるとすると,先に述べた赤字の科を沢山維持しなければならないので,個人や民間ではとてもできないものとなった.

 つまり,政府の病院つぶし政策が見事に功を奏しているのである.


まとめ:医師蔑視故に,介護保険は医師抜きで始められた.まあ,結局はコムスンのようなインチキ業者を産んだだけである.また,老人医療を介護に奪われ,病院はどこでも青息吐息.

 もし,かりに,介護事業を病院にやらせ,現在介護保険に使われている6兆円のお金が医療機関に回るようにしていたら,病院はその潤沢なお金で設備を良くし,科を充実させていったろう.現在の医療崩壊などあり得なかったろう.

 コムスンのような欲の皮のつっぱた奴なんか,介護業界に一杯いる.いや,医者だって,同じだと私は思うんです(自分も含めて).ただ,医者というのは,医業しかできないので,事業(医業)で得たお金をまた,医療に投資する.新しい科を新設したり,MRIやPETなどの医療器械を導入したり,診療所を大きくして病院にしたり,そのようにして自分の事業を拡大していこうとします.

 他の業種は違います.コムスンの社長の醜聞は沢山,週刊誌に出ていたし,コムスンを買った「ニチイ学館」は事務員と看護婦の派遣業者です.また,コムスンを買おうと手を挙げた業者に居酒屋の「魚民」もありました.彼らに,介護ビジネスで儲けたら,MRIを買おうという発想は少なくてもないでしょう.居酒屋をピカピカにしたり,新しいビールピッチャーでも入れるのでしょうか.

外車に乗っている医者は多いけど,今時,外車に乗っているから贅沢と言えるのか.日本車でも外車より高い車もたくさんある.外車といえども中古だといくらでも安く手に入る.奈良県の職員で,5年間で10日位しか出勤しなかった職員が話題になったが,彼の乗っている車はポルシェでした.

 コムスンの社長.さすが.自家用ジェットを持っています.医者で自家用ジェット機を持ている人をオレは知らない.

蝿太郎まんが美術館より ハロー・コムスン 蝿太郎氏より許可を得て転載)


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資料を二つ

医療に回す財源はもうないのか

日本医師会総合政策研究機構主席研究員 前田 由美子

 日本は一般会計の予算は80兆円なのに、そのうち社会保障費が20兆円、国債と地方交付税を除く一般歳出のなかでみると4割も社会保障費が食っていて大変なことだと言われています。

 ところが、日本には31の特別会計があります。連結してみると、その連結の歳出規模というのは260兆円にもなります。この20兆円をこつこつ削っていけば何とかなるという話ではありません。・・・

 またこのなかから、ちょっとどうかなという問題も見えてきています。連結予算で見ると歳入が290兆円、歳出が260兆円、30兆円の余剰金があるわけです。こんなもんを持たせておいたら大体ろくなことにはならないです。それから天下り組織への独立行政法人にも、単年度の補助金が運営交付金などで3兆円出ています。出資金ベースでは10兆円.

 以上のお金がこのような天下り先に出ています。

「役人の天下り先確保」と「公共性無き公共事業」と「アメリカ国債購入」のツケが、不当にも「社会保障費」に回されてきたし、これからも回されようとしている・・・というのが結論であり、上記の浪費を廃止すれば、財源はあります。

老人医療はこう変わった.平成17年に書かれたもの(某所のホームページより抜粋)


日の本:雑誌にこんな老人マンションの宣伝がでていたよ。

 

聞き手:何々。老人マンションの宣伝ですね。日の本さん。

 

日の本:そうだよ。面白いのはこの価格だね。老後、こんなところに住もうと思ったらこれだけかかる。

 

聞き手:入居時に900万か夫婦なら1500万くらい払うんですね。この金は、5年経ったら戻ってくると言うシステムですね。ゴルフの会員権とちょっと似ていますね。

 

日の本:うん。そして1ヶ月15万ほどかかる。これは食費と介護のお金をあわせてだが・・

 

聞き手:結構高いですね。

 

日の本:今、年金は人によって違うが、1ヶ月4万くらいから20万くらい支給されている。まともに考えると、年金の上位層しか利用できない。あるいは子供がその分出してくれる人か・・・まあ、なかなかそう言う人は居ない。

 

聞き手:そうですね、なかなかいませんね。ところで老人病院なんかはどうなんですか。もっと安いでしょう。

 

日の本:安かった・・・というべきだろう。去年の10月までね。

 

聞き手:安かった、と言いますといくらくらいだったんですか。

 

日の本:老人病院も今はいろいろ区分分けがあり一概には言えないけど、ここでは簡単に説明しよう。去年(平成16年)の10月まではだいたい1ヶ月3万円くらいだった。だから年金が4万の人がこういうところに入院しても、十分にやっていけた。5000円か1万円小遣いとして持って、それでおやつなんかを買えた。

 

聞き手:今はどうなんですか。

 

日の本:今年の10月に改訂となり、1ヶ月8万円くらいかかるようになった。こうなると苦しい人が出てきている。年金4万、5万の老人は家族が残りの分を負担しなくちゃいけないことになってきた。これはやっぱり一般家庭では苦しいことになってきている。

 

聞き手:そうですね。やっぱり4-5万出すのはうちの家計で考えると大変だ。

 

日の本:だから実際、年寄りを家に連れて帰り、世話をしている家族が大部増えてきた。介護保険を利用することになるわけだが、大方は家族が面倒を見なければならない。外出は出来ないし、呆けていて足腰も立たず、トイレに行けない人も多いので、文字通り、汗まみれ、クソまみれになって世話をしている。

 

聞き手:聞いているだけで大変そうだ。だけど年金が8-9万円以上あれば今まで通り老人病院にいられるんでしょうね。

 

日の本:それはそうだが、来年の10月にまた変わる。また上がります。

 

聞き手:えっ、また上がるんですか。どうなるんですか。

 

日の本:厚生労働省に悪知恵の働くヤツがいるもんです。食費、住居費というのは普通に生活していてもかかるもんだから、これは自己負担せよ、と言い出して、それが政府で決定されました。結論から言うと、1ヶ月13万円かかるようになります。

 

聞き手:13万・・・

 

日の本:そもそも老人が老人病院に入院していると、1ヶ月30万くらいかかる。1年前までこの1割り負担と言うことで3万で済んでいたんです。それが長期入院の場合は少し負担せよ、と言うことで去年の10月から1ヶ月8万円くらいかかるようになった。そして、住居費、食費は負担せよ、ということで来年(平成18年10月)から自己負担分が1ヶ月13万円となる。

 

聞き手:13万円なんて払える人いませんよ。どうするんですか!

 

日の本:親の年金が13万以上ある人は良い。問題ない。また、子供が裕福で10万なにがしかの金を年をとった親のために使える人は良い。今まで通り。しかし、多くの国民はそうじゃあない。

 

聞き手:親と一緒に住み、高齢になり頭が呆けて、足腰が立たなくなりトイレに行けなくなったら、汗まみれクソまみれで世話をしなくちゃあいけませんね。

 

日の本:そうだね。これも、借金700兆円。国家の財政が破綻寸前だと言うから、国民が甘んじて受けた結果なんだ。だけど、今回の偽装マンション騒動。 5000万のマンションを買ったが、倒壊寸前のものだった、ということで公的資金を出動するという。これは我々の税金だ。本当にばかばかしい。国家の財政を立て直すために、今まで老人を病院に入れておけば良かったものを、自宅で汗だくになって世話をしなくちゃいけないことになった。国民もテレビなど見て、マンション買った人可哀想だ、などと、同情心ばかりじゃあなく、国家の金を出す、ということがどういうことなのか本当によく考えるべきだね。

    

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